NESTOR TORRES

This Side of Paradise

2001 [Shanachie 5076]
 パッション、エレガンス、ロマンス…。カリビアン・サウンドの豊かな魅力を飾り付ける花形楽器のひとつフルート。リチャード・エグエス、ホセ・ファハルド、ジョニー・パチェーコのようなチャランガ・スタイルの名手からデイヴ・バレンティンのようなラテンジャズ界の人気者まで、実に様々なタイプのフルート奏者がこのフィールドに存在する。
 既にラテンジャズ・シーンで人気を確立している、プエルトリコ出身のネストル・トレスは、チャランガ時代から培ってきた豊かなイマジネーションと表現力で、リゾート・サウンドの極みともいえる快適さを表現するフルート奏者だ。Shanachieへの移籍第2弾の本作、彼が演奏しているときのキラキラと輝いた目と同様の生命力に満ちた演奏は、前作のグラミー・ノミネートによる自信も助力となっているのだろう。
 ポップに味付けられたソン・モントゥーノやダンソン、あるいはロマンティックなバラーダなど、相変わらず魅力的なフルートの音色が冴え渡っているが、チャック・ローブ(g) を迎えてのボサノヴァや、エド・カジェのバリトン・サックスが印象的なメレンゲ・ナンバー、おまけにトロンバンガ(ブラスがトロンボーンのみのスタイル)のサルサで初めて自らの歌を披露するなど、新しい試みも随所に施されている。また更にペドロ・グスマンのクアトロ・ギターをフィーチャーした、プエルトリコの政治問題であるヴィエケス島の平和への祈りを込めたタイトル、ジャネット・ジャクソンの“DOESN'T REALLY MATTER”など、バラエティ豊かなトラックが並ぶ。
 楽園への想いを開放的なサウンドに託すネストル・トレスの存在は、私たちの熱帯への憧憬に、その心地よさや安らぎを提供してくれるミュージシャンとして、かけがえのない存在である。(2001.04 SY)