GUACO

Equilibrio

2001 [Latin World 00306]
 現代ベネズエラ美術界の巨匠、カルロス・クルス・ディエスのカバー・アートが印象的な、グアコの新作。クルス・ディエスは、光・色彩のトリッキーな変化が加わった幾何学作品を数多く発表している芸術家であるのだけれど、何故グアコのカバージャケットがクルス・ディエスなのか。普遍的な形状の中に与えられた、見る者を驚かせる前衛的なエレメントは、いかにもグアコ的な姿勢を感じてしまうが、このアルバムに収録されている古典“HAY FUEGO EN EL 23”を聴くと、尚更そんな印象が残る。
 ホルヘ・ルイス・チャシンの作曲能力、ファン・カルロス・サラスならではの見事な曲アレンジ、シーンによって巧みに変化するグスタボ・アグアドのコロでの声音、屈強なリズムセクションとホーンアンサンブル等、“ベスト・トロピカル・アンサンブル”たる、以前からのグアコの魅力を挙げるとキリがないのだけれど、キャッチーなエレクトリック・ギターとスタイリッシュなピアノ・サウンドが加わり、一層ポップさを増しているのは最近の特長といえよう。
 ファンタジックな導入とリラックスムードが心地よいトラック#1、ファンクとサルサを往来するダンスチューン#2、グアコに正式復帰し再びテンションの高い声を披露するネルソン・アリエタの歌#3、重厚でメタリックなサウンドが特徴的な#4、これぞ正にグアコと言えるような過激なシーンが待ち受ける#5、といった展開からそれぞれの歌い手の持ち味が活きたファンク/サルサ〜バラードが続き、アルセニオの味わいとグアコ流のアグレッシブなサウンドの対比が面白い、フェルナンド・バジャダレス(ds) のアレンジによる#10。そしてエレガントなピアノが漂うブラジル臭のする前半部分から、知らぬ間に曲調が変わっているエンディングのアルバム・タイトル曲。このような手法は前作“COMO ERA Y COMO ES”に収録されていた、ロック・テイストからファンクに移行する“AGUAS DE CRISTAL”で衝撃を受けたが、グアコの最近の摩訶不思議なワザのひとつなのだろう。
 長いキャリアのなか、いつの時代も遊びきれないオモチャが詰まった箱を開けるような、楽しみに満ちたグアコの作品は、伝統と革新、期待と裏切り、安らぎと緊張といった、様々な表現要素の強固で絶妙な「均衡=EQUILIBRIO」の上に成り立っているのだろう。(2001.05 SY)