KALI

Racines Vol. 4

2001 [KALI / HIBISCUS 20011]
 うあっ。格好いいなこの写真。2人のベレ太鼓の後方に陣取る4人のチ・ブワ部隊!ベルエアの演奏家たちの古い写真のようだけど、こんなの丘の上から演らたんじゃイチコロです。写真だけでシビレます。
 バンジョー、チ・ブワ、ベレ太鼓、シャシャ(筒マラカス)などの古典的な楽器を用いた長閑なサウンドと、郷愁感漂うメロディで、ベルエア、シュヴァル・ブワ、ビギンなど、マルティニークの伝統音楽を発展させた "カリ" ことジャン=マルク・モネルヴィル。一連のシリーズとは別に、オリジナルの楽曲を中心とした比較的に実験要素の高いアルバムを、同じ数ほどリリースしているが、今回は「ラシーヌ vol.4」ということで、またまたビギン黄金期の才媛、レオナ・ガブリエルの古典を中心に、軽やかなバンジョーを響かせている。ジェルトリュード・セナンというシャンソン・クレオールのベテランの参加も、大きな呼び物だ。
 軽快さが際だつ#3の "LAISSEZ PLEURER MON COEUR" は演奏メンバーでもあるシャルル・ラビンスキーの作曲だが、こういったマルティニークらしいクァドリーユは、以外にもカリにしては珍しいのではないだろうか。
 カリの叔父でもある人気歌手のマックス・ランセイとは、お互いにアルバム参加し合っている通り相性はバッチリで、今回も相変わらず聴き応えのあるコンビネーションを1曲披露している。この曲に続く "OUE, OUE, OUE, OUE" というタイトルでも知られる "LA GREVE BARRE MOIN" は、様々なアーティストに取り上げられ耳馴染みの深い1930年代のビギンの名曲だ。
 他のトラックよりも戦闘的で黒いルーツを感じさせるのは、ユジェヌ・モナのメドレー。ユジェヌ・モナは、カリの音楽形成に大きな影響を与えた人物で、晩年のレコーディングにはカリ自身も参加していた。この曲でタンブー・ディ・バス(タンバリンを一回り大きくしたような摩擦ドラム)を演奏しているのはミシェル・シラ。
 ジェルトリュード・セナンが歌う "PERFUM A LI" はモウヌ・デ・リヴェルによって書かれたマズルカ・ナンバー。デ・リヴェルは1940年代に活躍し、シャシャを振りながら歌っていたチャーミングな歌手。耳に残るなんとも美しいメロディ。
 「ラシーヌ」シリーズは、単にカリというアーティストの作品というだけでなく、日本ではあまり紹介される機会が少なくなった、マルティニーク伝統音楽の奥行きを知る上での間口としても機能している。「ラシーヌ4」をきっかけに、このジャンルの新たなファンが増えることを期待しよう。(2001.09 SY)