EMO LUCIANO

Siente El Impacto - Feel The Impact

2001 [Synco Records SYN0001]
 1995年にファニアからリリースされたファースト・ソロアルバム『Emo Luciano』や、ラリー・ハーロウのグループでの仕事を例に挙げても、エモ・ルチアーノへのイメージは、ベテラン・ミュージシャンに囲まれた、オーセンティックなサルサ・シーンで活動する若い歌手というものだったが、このセカンド・ソロにあたる新作は、彼の嗜好と世代観がくっきり映し出された清々しいアルバムで、なおかつサウンド・クリエーターとしての才能も見せつける、彼の知られざる多芸ぶりも発揮された作品といえるだろう。
 ファースト・アルバムの最終トラックで「Love Won't Let Me Wait」という70年代のスウィート・ソウルのヒットソングをサルサ・アレンジでカバーしているが、このセカンド・アルバムを聞けば「ああ、あれはエモの好みだったんだな」ということが理解できる。今回の新作でも「What You Won't Do For Love」(ボビー・コールドウェル)、「Don't Let Me Be Lonely Tonight」(ジェームス・テイラー)、「Even Now」(バリー・マニロウ)という、いずれも70年代にヒットした、シナトラ直系の王道的なアメリカンポップスをカバーしている。また、ボレロを3曲も挿入するという歌い手根性もさることながら、オープニングのテンションの高いきらびやかな曲から、激しいソロ・パートが繰り出されるラストのインスト・チューンまで、ショー仕立てのような曲配列など、行き届いた気配りも気分がいい。
 今回はセルフ・プロデュースということもあって、エドウィン・サンチェス(p) やチャーリー・ガルシア(tb) など一部に馴染みある名前があるにせよ、ほとんどはあまり知られていないミュージシャンによって録音が行われている。一見クラシカルなサルサでありながら、パーカッション間の面白い掛け合い、的を得たシンセの挿入、スキャットや口笛を挟んだり、細部に渡ってアイデアと計算を放り込み、柵の多いフィールドのなかで創造性が発揮されている、最近では少なくなったタイプのアルバムである。
 このリリースをきっかけに、歌手としてのみならずディレクターとしても、活動の場をどんどん増やしていっていただきたい。(2002.05 SY)