FRANCISCO

Martinique Magique

1991 [Francisco Musique FM-CD-90]
 1991年リリースのちょっと古いCD。
 「マルチニックの少年」といえば、マラヴォワが音楽を担当したことで、このあたりの音楽ファンにとっては既にお馴染みとなっている映画だけれど、実はこの映画にはもうひとつ楽しみが隠されていて、ユジェーヌ・モナを筆頭とする、様々なマルティニークの伝統尊重派のミュージシャンが、端役であちらこちらに登場しているのだ。今回ピックアップした、このフランシスコ(フランツ・シャルル・デニス)もそのうちのひとり。「病気なら医者に行け!この小便たれ!」などと、サトウキビ収穫を監視する、口の悪い現場監督の役として登場している。
 深みのある燻された声で囁きかけるシャンソン特有の歌い方と、ウィットに富んだMCや時折見せる洒落たダンス、表現力豊かなピアノ。観客の笑顔が絶えない、エンターテインメント性の高いステージパフォーマンスは、フランシスコならではのものだが、彼名義の録音でCDとしてリリースされているものは意外と少ない。
 アルバムは、ビギンやマズルカを中心に、タンブー(太鼓)をフィーチャーした伝統色の濃い曲で埋められているのだけれど、ところどころ微妙にキューバ・ベースのラテン的なニュアンスが感じられる。これはUSラテンシーンでお馴染みのジャズ・サックス奏者、フスト・アルマリオのレコーディングなどで常連だったマルチ・プレーヤー、ジミー・タナカがこのアルバムでも様々な役割を担っているからなのだろう。是非はともかくとして、オリジナリティある作品に仕上がっている。
 1991年はユジェーヌ・モナが他界した年である。マルティニークの黒いルーツ音楽のシンボルともいうべき偉大な同志の死が、このアルバム制作への意欲をかき立てた、というのは勝手な想像だが、全編を貫くマルティニークへの慈愛の念に満ちた、彼の歌は感動的だ。
 つい先だって1987年にブリュッセルで行われたライヴ・レコーディングがCD化されたが、日本に入ってくるかどうかはあまり期待できない。この『Martinique Magique』に収録されている「Ainmin La Vie」と「Caroline」は、マラヴォワのアルバム『Matebis』『Matebis En Concert』などでも披露されている(タイトルはそれぞれ「La Vi A Bel」「Karoline」)ので、機会があればチェックしていただきたい。(2002.06 SY)