EL NEGRO & ROBBY

At The Third World War

2002 [east works ewac-1031]
 ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」。歌っているのはルベン・ブラデス。この曲を聞いて「オルタモントの悲劇」を思い浮かべる方もいるに違いない。「オルタモントの悲劇」とは、1969年にオルタモントで行われたストーンズのフリーコンサートで、彼らの演奏中に警備を任されていたバイク集団ヘルス・エンジェルスによって、一人の黒人青年が刺殺されるという、ロック史に残る事件である。(詳しくはストーンズの映画「ギミー・シェルター」参照)ヘルス・エンジェルスによる警備をストーンズに薦めたのは、グレートフル・デッドのジェリー・ガルシア('95没)。晩年にセッション・ビデオも発売されているように、偶然にもルベンとも親交があったロック界のカリスマ・ギタリストである。時代を超えた奇妙な巡り合わせだ。
 オラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスとロビー・アミーンという、ラテンジャズ・シーンでお馴染みの二人のドラマーによるユニット。「悪魔を憐れむ歌」のアイデアを発案したエル・ネグロによる、そんな悪巧み(実際は故意によるものかは分からないが)によって、アルバムの幕は開かれる。
 二人が叩き出すリズム・アンサンブルは、ディープ・ルンバでも既に知られているところだが、確かにジェリー・ゴンサレスやボブ・フランセシーニ、ジョスヴァニー・テリーといった、ラテンジャズの腕利きがサポート、アフロキューバン・リズムのエッセンスを多分に含んだサウンドが展開するとはいえ、奔放さを増したグルーヴ感はジャンルを突き破るほど更に強力だ。ジャック・ブルース参加──タダでは済まされない雰囲気を伝えるには、このロック界の大御所ベーシストの名前も十分なオドシになるだろう。
 ルンバ〜ファンク〜ティンバ〜マイルス(・デイヴィス)っぽい曲など様々だが、ユニークなトラックが「Far From Beirut」。ラテン/ジャズのフィールドで名を馳せてきたロビー・アミーンが、自己のルーツ(ロビーはレバノン系)をテーマに扱うことは、珍しいことではないだろうか。
 雪崩のように繰り出される音数の多いドラミング。20数年前のフュージョン流行時に、スティーヴ・ガッドよりビリー・コブハム(パナマ出身!)に「イケてる感じ」を受けていたドラマーにも、同様の熱の伝わりを感じるに違いない。ビリー・コブハム〜ジャック・ブルース〜ロビー&エル・ネグロ。ここにまた、時代を超えた奇妙な巡り合わせが見え隠れする。(2002.07 SY)