MARIO CANONGE

Carte Blanche

2001 [Kann'/ Wagram 3072512 - WAG331]
 フレンチ・ジャズ界でビギンの使い手がどのくらいいるのか分からないけれど、まず真っ先に思い浮かぶのがピアニストの“スーパー・マリオ”ことマリオ・カノンジュ。パリをホームグラウンドにしていることもあり、ラテン、ズーク、アフリカン・ジャズ、アラブ、カボ・ヴェルデなど、様々な現場に神出鬼没しているが、1991年の初ソロアルバム以降、彼名義のアルバムでは一貫して故郷マルティニークの優雅なリズムである、ビギンをスイングさせている。
 通算7枚目のソロにあたる今回の作品は、トニー・シャスール、ラルフ・タマールといった常連、カッサヴのジョセリーヌ・ベロアールなど同郷のシンガーたちに加え、キューバのオルケスタ・アラゴンのバイオリン・アンサンブルや、スティール・パン奏者としてカリスマ的な人気を誇るアンディ・ナレル、パリのラテン音楽シーンを地道に支えてきたベネズエラン・パーカッショニスト、オルランド・ポレオなど、ユニークな顔ぶれが参加している。
 ジョセリーヌ・ベロアールが歌う淑やかなビギン、トニー・シャスールが歌うジャジーなズーク・ラヴ、マズルカのリズムに乗って響きわたるアンディ・ナレルのスティール・パン、タクシー・クレオールのマックス・テレフも参加するレゲエ・チューンなど聞き所満載な中、何といっても興味深いのはラルフ・タマールとアラゴンのバイオリン・アンサンブルの共演である。かつてラルフ・タマールが在籍したグループ、マラヴォワはバイオリン、チェロを抱えたクラシック・ビギンの典型的なスタイルを発展させ、オルケスタ・アラゴンのようなバイオリンを強化したチャランガ・アンサンブルをヒントに、オリジナリティを見いだしていったグループとして知られている。しかし今度はラルフ・タマールの歌うビギンに、アラゴンによるマラヴォワ風のバイオリンを加えた、何ともイタズラっぽいアレンジだ。アラゴンの世代も変わったとはいえ、スペイン語でキューバン・クラシックをピックアップしてきたラルフ・タマールにとっても、感慨があるのではないだろうか。
 そしてマリオ・カノンジュとアンディ・ナレルの、ピアノとスティール・パンによる、激しくも優雅な「West Indies Rhapsody」。カリブ海から紡ぎ出された、音のクロスロードを縦横無尽に疾走する、二人のアーティストならではの競演によってアルバムは締めくくられる。まだまだアルバムの続きを聞いていたい。(2002.08 SY)