RUBEN BLADES

Mundo

2002 [Sony Discos 84625]
 マーク・キニョーネス(perc)、ボビー・アジェンデ(perc)、ネルソン・ゴンサレス(tres) ら、ニューヨーク・サルサ界の知られたミュージシャンたちが参加する「ESTAMPA(足跡)」とタイトルされたオープニング・ナンバー。ルベン・ブラデスの真骨頂とも言うべく、静かに熱を帯びていくこのルンバ・グアグアンコーの後には、壮大なスケールの音楽の旅が待ち受けている。
 今回も前作『TIEMPOS』同様、コスタリカのエディトゥス・アンサンブルとのコラボレーションが基本となるが、ブラジルのボカ・リブレやアルゼンチンのデ・ボカ・エン・ボカといった、ベテラン&若手女性のヴォーカル・アンサンブルや、映画『タイタニック』のサントラでも知られる、アイルランド出身のパイプ奏者、エリック・リグラーなども招き、かつてない程大きな振り幅を持ったアルバムに仕上げられている。
 アフロ・キューバン、ケルト、ジプシー、ブラジル、西アフリカ… 様々な音楽エッセンスが染み込んだトラックは、ワールド・ミュージック・ファンをニンマリさせる結果となり「変化についていけない」という〈サルサのルベン・ブラデス〉が好きなファンの意見も出ているようだけれど、キューバやプエルトリコのフラッグを、目隠ししていても描けるようなラテン音楽の熱狂者でも、デザインすら思い出せないパナマという国で生まれたルベンにとっては、石にかじりついてでもサルサの基本アンサンブルにこだわる理由はないわけで、今回英国〜スペインの伝統などを色濃く扱っているのも、イングランドやガリシアの血が混じったルベンにとっては、当然のなりゆきと言えるのではないだろうか。
 確かにルベン・ブラデスという人物は、サルサのド真ん中から世界進出に成功したアーティストとしてよく知られているが、風刺やメッセージと優れた即興性を持つトロバドールとしての彼の本質は、ギターを手に「PABLO PUEBLO」を歌っていた70年代と、スタンスとしては何ら変わりのないように思う。
「世界の音楽」を楽しむ旅ではなく「世界と音楽」を楽しむ旅。常に世界を視点に捕らえているルベン・ブラデスのクリエーターズ・スピリットが、近年最も発揮された作品ではないだろうか。ヒーリング効果有りマス。
(アイルランドの古典「ダニー・ボーイ」が選曲されているけれど、映画『プレデター2』でルベン扮する刑事がクリーチャーに殺されるシーンを思い出したのは私だけ?)(2002.10 SY)