PATRICK SAINT-ELOI

Swing Karaib

2002 [PSE / Lusafrica 362 832]
 ズーク・シーンの若手のレコーディングが打ち込み中心であるのに対し、いつもスケール感のあるホーン・アンサンブルによる厚みのあるサウンドが印象的なのが、カッサヴやそのメンバーたちのソロアルバムの特徴。このパトリック・サント=エロワの新作も例外ではない。
 今回も毎度のごとくフレデリック・カラカス(b) の骨組みのしっかりしたプログラム/アレンジのもと、ジャコブ・デュヴァリュー(g)、MC.クローヌ(cho) らベテランが脇を固め、安定感のある王道的な音作り。全曲パトリック自身による完全オリジナルである。プログラミングに頼り切らず、随所に有機的なパーカッションのアクセントを聞かせているのは、同じパトリックでもサント=エリだろう。CDのクレジットは間違い。
 ここ数年のアルバムのなかでは、いつになく陽気さが漂うこのアルバム。軽快なリズムをズークに求めるファンにとっては、タイトル共に興味を引くところだけれど、彼の得意とするのはやはりメロウなラヴソングに他ならない。好きなアーティストとして、ユジェヌ・モナやチェオ・フェリシアーノの名前を挙げるマルティニーク出身のカッサヴのメンバーたちに対し、唯一のグアドループ出身者である彼がマービン・ゲイなどを挙げていることからも、甘口のR&Bに嗜好を持っていることが理解できるだろう。
 珍しくグィロの音が微かに聞こえるタイトル曲「SWING KARAIB」、グウォ・カっぽいタンブーがフィーチャーされた「AN LA」、ズーク草創期を思わせるタイトなビートの「SOLEY CHO」などは、このアルバムを特徴づける明るいトラックだと思うけれど、やはりパトリックの本領を感じさせるのは「LIMIE」「MEN'NE MWEN」やヒットを飛ばした「H2O」などのしっとりとしたトラックだろう。似たような声質ながら、強力なパンカリビアン・サウンドに威力を発揮する、盟友ジャン=フィリップ・マルテリーとは好対照な趣だ。
 最終トラックには、アルバム『200% MEGA MIX』を出している、人気のDJジャクソンによるリミックスも用意されている。
 前スタジオ録音の『LOVTAN'S』では、メリハリの少ない曲並びが唯一気になっていたけれど、そのあたりはスルリと何もなかったように改善されているのは、やはりベテランならではのソツのなさ。(2002.11 SY)