TANYA ST-VAL

AnsAnm'

2002 [CREON/ NETTY PROD 5436502]
 タニヤ・サン=ヴァル4年ぶりのスタジオ録音は、久々に聴くブリリアントなズークが挿入。ソウル/R'n'Bズークの先駆者としての彼女を知る人ならば、ちょっと「おや?」な内容だ。自身のレーベルNETTY PRODからのファースト・リリース。ジャケット中写真のお腹の大きなタニヤの写真からも分かるように、結婚と出産(双子らしい)という女性としての大きな経験。そしてルイ・デュルグレの反乱(ナポレオンの奴隷制度復活に対してグアドループで起きた大規模な奴隷の反乱)200周年。「おや?」な内容には、こういった様々な事由が絡んでいるためだ。
 ひとつ注目したいのはユニークなゲスト歌手の面々。デビュー当時を思わせる軽快なズーク「NYANGO OH
É」に続いて一変する「SA MWEN KA MANDÉW」でのフェミニンなタニヤの歌声に絡むのは、ジョルジュ・デシムス(元カッサヴ)プロデュースのソロCDが記憶に新しい、元ボルト・フェイスのドミニク・ココ。続く「ONLY POU MWEN」では、今年リリースしたアルバムがヒットを飛ばした注目の若手、スライがフィーチャーされている。パンカリビアン・サウンド全開の「CARIBBEAN FEELIN'」といった曲に加えて、アラン・カヴェ、エムリーヌ・ミシェルといったハイチのトップスターの登場は、カリブの人間としてのリレーションシップを意識してのことだろう。
 トラック#5の「ADONA
Ï」は“有色人種専用の座席”を拒絶した米国の黒人女性ローザ・バースと、グアドループ伝説のグウォ・カ太鼓奏者、ヴェロを歌ったもの。トラック#10の「SOLITUDE」(カバージャケット表記上は#9。#9#10は曲順が誤表記)では、アンティーユの歴史の中でヒロインになった奴隷女性に関して歌っている。また、タニヤの父親作曲による美しいメロディと、フレデリック・カラカスの優れたアレンジが光る「ANMWÉ」も、砂糖工場(=アンティーユの文化遺産)の閉鎖について歌ったもの。グアドループ人としての自己の本質や、社会的なテーマを強く押し出しているのも、彼女のアルバムとしては珍しい。
 もちろん“ソウル・ズーク”の看板を掲げるタニヤのオハコともいうべき、冷めた質感を持つR'n'Bズークも抜かりなく収録されているし、終盤にはズークの枠をはみ出した、タイプの異なるポップ・チューンも2曲収録されていて、相変わらず懐の深さを見せつけてくれる。
 自由・快適を求めて設立した自主レーベル。曲作りの術を知り、後進のサポートにも意欲を示すタニヤ・サン=ヴァルの、今後の展開にも多いに注目したい。(2002.12 SY)