EDITH LEFEL

Si Seulement...

2002 [CREON 5806162]
 ジャン=ミシェル・カブリモルのレコーディングからジャン=リュック・アルジェとのデュエット、そしてファースト・ソロ・アルバム『LA KLE』('88)に収録されたラルフ・タマールとのデュエット「S.O.S. MÉMÉ」のヒット、以降スター街道まっしぐらのマルティニークを代表するトップシンガーとなったエディット・ルフェール。彼女のキャリアを考えれば、ベテランの風格のようなものがにじみ出てもよいのだけれど、持ち前の清楚さ故か新鮮な輝きはデビュー当時と変わらない。
 彼女にとっての新世紀最初のレコーディングは、90年代のものとはちょっぴりニュアンスが異なる趣。曲アレンジはグループ・ロスカンのフレデリック・ウルツ。といってもピンと来ないかもしれないが、近年数多くのズークラヴ系人気アーティストのレコーディングで手腕をふるっているプログラマー/ピアニストである。したがって、フレデリック・ウルツのコネクションである、ロドリグ・マルセルやジョスリーヌ・ラビールといった、甘く耽美なズークで売っている歌手たちが参加をしていたり、何よりも作曲面でサポートを行っているアリー・ディブーラのカラーが出ているのが大きな特徴だろう。とはいうものの普段の打ち込みの多い彼らのソロアルバムとは違い、ティエリー・ファンファン(b)、ジャン=フィリップ・ファンファン(dr)、バゴ(per) らマリオ・カノンジュ(p) 周辺、あるいはジャン=リュック・ピノ(vl) を含むストリングアンサンブルの投入など、ジャズ/人力ズーク、アコースティック系のミュージシャンが抜かりなく顔を揃えていたり、ずっと彼女のレコーディングに参加しているジャン=リュック・アルジェの名前が見られるのは嬉しい。
 まずぶっ飛んだ曲が「APARTHEID」。80年代のマラヴォワの代表曲をストレートなメレンゲでカバー。元々メレンゲっぽいリズムを持った曲だけれど、ホーン・アンサンブルがきっちり入った、このフィールドでは珍しいアレンジだ。同様に「TOMALINE」も80年代の曲で、マリ=ジョゼ・アリの当時のオリジナル・レコーディングではエディット・ルフェールはコーラスで参加していた。こちらはビギンでのアレンジ。
 タイトル通りマズルカ・ナンバーの「MAZOUK SAINT PI
É」。もうこのあたりの淑やかなマズルカはエディット・ルフェールの十八番。最もしっくりきます。さすがにこれは彼女の魅力をよく知る男による作曲。「やっぱりあんただ」のロナルド・ルビネル(夫)によるもの。
 また、エディット・ルフェールの二人の子供に捧げた「TI B
ÉBÉ」は、R'n'B系ズークのジャン=ミシェル・ロタンの作。彼の名前も過去のレコーディングを考えると珍しいのでは。タニヤ・サン=ヴァル『SECRET』('98)あたりでも実証されている通り、ロタン&ウルツの相性が生み出すスタイリッシュな曲調は、アルバム随一の洗練を誇っている。
 一見ズークラヴの度合いが高くなったようだが、タンブーやシャシャなど伝統楽器が加わったマズルカを挟み込んだり、アコースティックなピアノやストリングスの投入など、伝統と流行あるいはアナ・デジのバランス配分はお見事。クリエーター陣が変わってもエディット・ルフェールのアルバムはいつも完成されているなあ。(2003.01 SY)