JOCELYNE BEROARD

Madousinay

2003 [CREON 5923442]
 カッサヴのオリジナル・メンバーとして知られる、ジョセリーヌ・ベロアール3作目のソロアルバム。他のメンバーに比べると、随分と久しぶりのリリースだと思うけれど、歌手や作詞家としてのソロ活動の他、カッサヴのスポークスマンのような役割もしており、活動範囲の広い彼女の多忙さ故ということなのだろう。しかしその作品の出来映えは、ファンの長い渇望期間を埋めるべく、かなりハイレベルなものに仕上がっている。カッサヴのリーダー、ジャコブ・デュバリューによる創作心溢れるプロデュースである。
 タクシー・クレオールのキーボード・プレーヤー、ジル・ヴォワイエ作曲によるズーク・ベトン「PAWOL GRANMOUN」、アルバム名が副題に付いた、同朋ジャン=フィリップ・マルテリー作曲の柔らかなズーク「VINI S
ÉRÉ」、オープニング&エンディングがグアドループ臭い、ジャコブ・デュバリューによるギター・サウンドが印象的なトラック「WÈ YO」、ウィリー・サルゼード作曲による彼らしい甘いズーク・ラヴ「LANMÈ MOVÉ」、マリオ・カノンジュ作曲の故エディット・ルフェールに捧げるヴァルス「DI'Y MESI」他、フィリップ・ジョセフ(クワック)、ジャン=クロード・ネムロ(カッサヴ)、バルバドスのソカ・バンド、クロスファイアのエドウィン・イヤーウッド…、トップ・クリエーターたちによる楽曲がギッシリ収録されている。なかでもフレンチ・ギアナが生んだシャンソン界の巨匠、アンリ・サルヴァドールのアコースティックなジャズ&ボッサ「ATANN」も、カバーではなく書き下ろしというのは驚きだ。
 またトニー・シャスール、元ズーク・マシーンのドミニク・ゾロバベルとクリスティアーヌ・オビドルの二人、スージー・トルボー、MCクローヌ、ジャン=ポール・ポニョンといった、ソロやグループのフロントで活躍する人気歌手たちのコーラスも豪華。
 さらに演奏面もカッサヴのサポートメンバーを中心に、ズーク/フレンチ・カリブの最高の布陣が録音に参加、ジャジーなトラックではコントラバスやバイオリン・アンサンブルを投入するなど、ホーンの入ったカッサヴ仕様のズーク・ベトンや、打ち込みを多用した曲とのコントラストも考えられていて、その抜かりの無さはさすがである。
 アルバムタイトル“MADOUSINAY”は「情」や「優しさ」を意味するという。ズーク・クイーンとしてのジョセリーヌ・ベロアールとはまた違った、角の取れたアルバムには違いないけれど、このジャンルのスタート地点の中心にいたアーティストとしての彼女の誇りもまた感じずにはいられない。「ズーク」の懐の深さを世界に示すべく、高いモチベーションとデカいスケール感を持ったアルバム。(2003.09 SY)