JACKITO

Pèsevere

2003 [J.S.Records 011]
 現在のハイチのコンパ界を代表するアーティストのひとり、ジャッキートことジャック・ソヴール・ジャン。絞り出されるように発せられる歌声は決して美声とはいえないけれど、深く燻された声とその特性を活かしきった歌唱は、一度耳にしたら忘れられないほどの魔力を持っている。近年では、コンパ以前のハイチの大衆音楽の素朴なスタイルを甦らせた、アイチ・トゥバドゥへの参加でも知名度を上げているけれど、まさにそれは作詞作曲能力を持ったトゥバドゥ(トロバドール)としての彼の資質が表面に出された仕事であったに違いない。このアルバム『PESEVERE』にしても「JE L'AIME A MORIR」(隣国ドミニカ共和国のセルヒオ・バルガスがメレンゲでヒットを飛ばした「LO QUIERO A MORIR」です。DLGやジゼルで覚えているかな?)以外は、すべてジャッキート自身の作品である。
 この『PESEVERE』のレコーディングに参加するミュージシャンのリストには、ゼングレンのニッケンソン・プルドム(key) を始め、スカ・シャ、ニューヨーク・オールスターズなどで見覚えのある名前が目に付くが、何といっても注目すべきはドラムのシェドリー・エイブラハムの存在だろう。新世代コンパのトップ・ドラマーとして、数々のアーティストたちに引く手あまたのモテぶりだけれど、シェドリー・エイブラハム本人のクレオール・ジャズ・プロジェクト“DJAZZ LA”でも最近高い評価を受けている、ハイチのポピュラー音楽シーンの台風の目のような存在だ。
 この焦らしがタマらんという、何ともジャッキートらしいタメの効いたコンパがアルバム前半を占めるが、真ん中の「JE L'AIME A MORIR」を境にシーンは様相を変えていく。レゲエからバラード、スペイン語で歌われるラテン・テイストのダンスチューン、カーニバル・ムード全開のララ(=ハイチの祝祭音楽)など、山盛りのサービス・トラックが後半に待ち受けているのだ。チャレンジャー精神というべきか、抜け目がないと言って良いのか分からないけれど、これはまったくサスガの守備範囲。ゆったりとしたテンポのコンパに散りばめられる彼の即興的な歌に加えて、このアルバムの価値を一層のものにしているのではないだろうか。
 ハイチはまもなく建国200周年を迎えるが、ライヴやレコーディングを含め、恐らく様々なオールスターによる企画が練られるに違いない。そのときには再び強烈な印象と共に、ジャッキートのスパイシーな声が耳に飛び込んでくることを必至の覚悟で待ち受けたい。
 えーと、ところでジャケットの“007”の数字は何だろう?7作目ってことかな?(2003.10 SY)