HUASCAR BARRADAS Y MARACAIBO

Candela

2001 [Latin World 1132]
 キューバはもとよりプエルトリコやマルチニークのミュージシャンがそうであるように、ベネズエラにも自国の伝統音楽の要素をジャズと結びつけているミュージシャンは少なくない。フルート奏者のウアスカル・バラーダスも近年メキメキと頭角を現してきた、ジャズ・ベネソラーノの注目すべきミュージシャンのひとりである。
 ウアスカル・バラーダス&マラカイボの5作目。マラカイボはカラカスに次ぐベネズエラの都市名で、この国の基幹産業である石油産出の中心地。カバー・ジャケットの、暗がりに浮かぶマッチ箱から出されたフルートの先の小さな火が、瞬く間に燃え上がる演奏の前兆を物語っている。
 グループ名の通り、ウアスカル・バラーダスを含むフルート、クアトロ、ピアノ、ベース、ドラムス、パーカッションの6人ともマラクーチョ(マラカイボっ子)で、ピアノのアグスティン・エスピナ、ドラムスのフェルナンド・バジャダレスは、ベネズエラのスーパー・バンド“グアコ”の中心メンバーとして長年働いてきた人物として知られている。
 豪華なゲストを各所に配しているせいか、格段とスケールの大きさを感じさせる今回の作品。例えば、フラメンコとキューバン・リズムをミックスしたオープニングの「RUMBA EN MADRID」や、チンバランゲレ(マラカイボの伝統太鼓)の音が印象的なダンス・チューン「CANDELA」では、グアコのシンガー陣の声を聴くことができる。特に「CANDELA」では自ら“G-Huaco”と称するほど、ウアスカル風グアコ・サウンドが面白い。ラファエル・グレコ(sax)、ペドロ・ナバーロ(g)、ビクトル・メスタス(p) らグアコ関係のミュージシャンも随所に関わっているようだ。
 また、パット・メセニーとペドロ・アスナールに捧げる「CANCION SIN NOMBRE」では、ボーカルにポップス歌手のペドロ・カスティージョが参加し、イラン・チェスターやシモン・ディアスといったベネズエラを代表する人気ベテラン歌手たちも、リアレンジされた自らの代表曲でその声を披露している。
 さらに、ホローポ色の強いナンバーでは、アンサンブル・グルフィーオのエルネスト・ラヤが小気味よくマラカスを振り、最終トラックには大ベテラン・ドラマー、フランク“エル・パボ”エルナンデスのドラムソロまでフィーチャーされているという豪華さ。
 もちろんゲストの助力だけでなく、ホローポ・クラシック「EL CURRUCHA - AMALIA ROSA」のラップを取り入れた過激なアレンジや、オリジナル・トラック「HUASCARADA」「EL ALACRAN」に見られるアンサンブルの素晴らしさは彼らならではのものだし、メンバーの演奏力もオミゴトとしか言いようのないほどのレベルの高さだ。
 メルメラーダ・ブンチ(マラカイボの人気レゲエ/ロック・バンド)の活動で忙しいメンバーもいるけど、フルバンドでの来日を是非とも望みたい。今最も注目すべきラテンジャズ・グループのひとつ。(2003.12 SY)