MARIO CANONGE

Rhizome

2004 [O+ OP102]
 パリを活動の拠点にするフォール・ド・フランス(マルチニーク)生まれのピアニスト、マリオ・カノンジュ。前作『Carte Blanche』は、オルケスタ・アラゴンやアンディ・ナレルらをゲストに迎えたパン・カリブ指向の強い作品だったが、今回はまたニューヨークのミュージシャンも加わり、新たな趣向を加えた作品を発表している。
 マリオ・カノンジュといえば、ジャズ・テイスト溢れるビギンをトリオ〜スモールコンボで演奏するのがいつものスタイル。彼が取り上げるそのビギンやマズルカといった音楽は、フレンチ・カリブの伝統的な音楽とはいえ、生まれながらにモダンさを持っていた街っ子の混血音楽だが、しかし今回はそれに加えてベレやグウォ・カなど、土着色の強いアフロ・カリビアン・リズムをジャズと融合させている。この制作理由の背景には、恐らく近年クレオール・ジャズに傾倒しているジャズ界の大物サックス奏者、デビッド・マレイの作品が影響しているのではないだろうか。デビッド・マレイの活動のひとつであるグウォカ・マスターズあたりを聴くと、強引気味のサックスと太鼓のポリリズムを強調したワイルドな作品という印象を受けるが、このマリオの作品では対照的に、クラブ・ジャズ的なニュアンスや明快かつエレガントなアレンジで、無理のない洗練形が提案されている。
 参加するミュージシャンは、かつてマリオ・カノンジュが在籍していたズーク・バンド“サキヨ”“ニュー・サキヨ・プロジェクト”のリーダーであるミシェル・アリボ(b) や、グアドループの太鼓集団“アキヨ”のジャン・ピエール・コクレル(vo)、アフリカンジャズ界の美声ジノ・シトソン(vo) などが興味深い顔だが、何よりもロイ・ハーグローブ(tp) やリチャード・ボナ(今作は歌のみ)といった、ワールド/ラテンの分野でも知られる、USジャズ・シーンの人気アーティストが加わっているのが目玉だろう。また本格的なラテンジャズの導入もあって、ドラムにアントニオ・サンチェス(パット・メセニー、ダニーロ・ペレス)やパーカッションにミゲル・ゴメス(アフリカンド)といったラテン系プレーヤーを配しているのも注目すべき点だ。
 マルチニーク大衆歌謡の伝説的アーティスト、故ユジェーヌ・モナの「Missie Criminel」をリメイクした楽曲に始まり、グウォ・カのエッセンスが溢れるタイトル曲に終わるこの作品、バイリンガルな解説から予想するに、USジャズ・シーンも視野に入れてのリリースだろう。しかしそこにどれだけこうした音楽のニーズがあるのかは未知数だが、少なくともパリでは成し得なかった仕事に対するマリオの達成感が感じられる。音楽を巡るスーパー・マリオの航海はまだまだ続く。(2004.10 SY)