IZALINE CALISTER

Krioyo

2004 [Network 26258]
 アオラ・コーポレーションによるオトラバンダ・レーベルの紹介によって、知られざる音楽のホットスポット、キュラソーのサウンドの一側面が耳に伝わってきたのはつい最近のことで、まだまだかの島の魅力に触れる機会はそう多くない。
 このイサリン・カリステルは島でよく知られた若手シンガー/ソングライター。3作目にあたるこの『Krioyo』は、トゥンバを始めとするバラエティに富んだアフロ・キュラソアン・リズムの魅力がふんだんに散りばめられた快作、タイトル通り彼女の“クレオール”魂が貫かれた作品である。といっても彼女はジャズ系のシンガーであり、古典的なフォルクローレなどではなく、ポピュラー音楽として洗練された聴きやすい内容。さすがにサルサやジャズが親しまれている土地ということもあり、パキート・デリベーラやダビッド・サンチェスら、ラテンジャズ界の人気アーティストのレコーディングなどで知られる、キュラソー出身の才能あるミュージシャンたちが参加している。宗主国がオランダということもあって、在蘭ベネズエラン・パーカッショニストのヘラルド・ロサレスとの親交も深い。
 オープニングの「Áwaseru」はパピアメント語で“雨”を意味するらしく、雨音を効果音に用いたスピリチュアルなトラック。ベース音にキューバの楽器マリンブラを使用しているのが面白い。1920年代の労働者の往来以降キューバ音楽はこの地でもポピュラーで、ライナーには“ダンサ”というリズム表記があるが、私たちが知っているダンサとは風合いは異なるキュラソー流のダンサ。キュラソーへのダンサの流入はプエルトリコ経由とオトラバンダのサイトは解説している。
 続く#2の「Wow'i Kariño」はマルチニーク臭プンプン。ライナーには“ズーク”とあるが、まるっきりマラヴォワ風味のビギン。また#3の「Mi Sòpi」はアルバム中唯一のカバー曲で、オリジナルは島の有名な作曲家リグナルド・レコルディノによるもの。スークース調の軽快なアレンジ。リグナルド・レコルディノのフィエスタ・スタイルの曲はメレンゲにもピッタリで、かつてウィルフリード・バルガスらにもピックアップされていたはず。
 キュラソーはカリブ海の多くの島がそうであるように、ヨーロッパの舞踏音楽が色濃く残っている地でもある。#5の「Ta Abo So」はアンティル風味のワルツ。クアトロ+ピアノ+ベース+ウィリ(キュラソーの金属製グィロ)のシンプルな編成ながらとてもエレガントな曲。
 以後、ベネズエラに近いこともあってガイタ・スリアーナと近親性を感じる曲、ペンタ(ABC諸島特有の口弓)を用いたアフロ・テイストの濃いもの、バラードなど、バラエティ豊かな曲調はまったく飽きさせない。
 最終トラック「Telenovela」では、イサリン・カリステルの強靱な喉と圧倒的な歌の上手さを思い知らされることとなる。(2004.10 SY)