JUAN COLON

Nuestro Merengue

2004 [Mammbo Maniacs 8048651102]
 1930年代から50年代にかけての米国でのビッグバンド〜マンボの流行は、そのままカリブ海の近隣諸国のローカルミュージックに大きく影響し、そのモダンさの象徴のひとつでもあったサックスという楽器を、アンサンブルの花形に持ち上げた。ハイチのストリート・ミュージックへのサックスの流入は、コンパ/カダンスという国民的な音楽のフォーマットを生み出し、プエルトリコでは、黒く粘るようなボンバのリズムで国を熱狂させた、コルティーホ楽団のサウンドの胆ともなっている。
 ドミニカ共和国のメレンゲも同様のこと。タンボーラとグィラが刻むしゃくり上げるようなリズムに乗せて、ここぞとばかりに熱くけしかけるサックスのコンビネーションは、メレンゲの典型における必勝パターン。その高揚感のあるサウンドは、土着色の強かったメレンゲを国を代表する文化にまで導いた。
 ファン・ルイス・ゲーラ、ミリー・ケサーダ、クコ・バロイ&ラモン・オーランド他、現代メレンゲ界のトップ・アーティストが献辞を寄せていることからも理解できるように、ファン・コロンは、このフィールドではよく知られたサックス奏者だ。アンリ・ヒメネスやマヌエル・テハーダら敏腕プロデューサーたちの仕事にも数多く腕を貸す、非常に信頼の枠が大きいミュージシャンである。
 ニコ・ロラ、ルイス・アルベルティ、グァンドゥリートといった、メレンゲの歴史を語るに欠かせないバンドリーダーたちの作品をカバーした、全編インストのこの『Nuestro Merengue』。メレンゲの醍醐味を熟知したファン・コロンのサックスのユニゾン(本人による重ね録りなのだけれど)が冴え渡った、悪政名高いトルヒーヨ政権時代を彷彿とさせる、フル・オルケスタ型メレンゲ。サックスやアコーデオンだけでなく、ピアノやマリンバなどのソロも軽快に、ジャズに傾倒しすぎない腰のうずくダンサブルなアレンジが続く。
 フラニートやフランシスコ・ウジョアらの活躍で、少人数編成のストリート色の強いスタイルが一時は見直されたが、ボールルームの磨かれたフロアで演奏された、優雅なものも、メレンゲが通ってきた大事な道筋だったはず。時折こうした忘れられた歴史が呼び起こされることで、ドミニカ音楽の懐を知る窓口ができることは、ファンにとっては非常に嬉しい出来事であるに違いない。(2005.1 SY)