MARCÉ & TOUMPAK

Pé Épi Kouté

2005 [Hibiscus 20421]
 “マルセ”ことベルナール・パゴがまた痛快なアルバムを制作した。彼のアルバムを聴くのは久しぶりだけれど、ジャケットをひっくり返してみると、トゥンパクのメンバーも若干変更があるようで、現代マルチニーク音楽伝統派のファーストコール、カリのグループの中で大きな存在感を示している“ロロ”が、お馴染みのアコーデオンやシャシャ(筒マラカス)ではなく、いつの間にかギタリストとして正式に加入している。
 マルセといえば、エレクトリカルな楽器とシュヴァル・ブワとのミックスを試みた“ズーク・シュヴ”を武器に、デデ・サン・プリとはまた風合いの異なる、タイトで快活なシュヴァル・ブワの使い手として、ズーク最盛期に注目を浴びた人物だ。これまでに様々な国際フェスティバルにも参加し、海外でも非常に高い評価を得ている。
 マルセの音楽の興味深いところは、単にシュヴァル・ブワのバリエーションや、その現代化といった他にもあるようなものではなく、従来には無かったアンティーユの伝統音楽同士を娯楽性高く編み上げている点にある。伝統芸能への深い知識が感じられるが、特に現在では演じ手が少なくなったと言われる、グアドループでローカライズしたクアドリーユ(=カドリール)にも精通していることが、彼の存在を印象づけている。このアルバムのオープニングが、まさにマルセならではの試みで、グアドループの号令形式のクアドリーユのアンサンブルが、ケルトと大きなつながりを持っていることを証明しているような曲だ。マルセが叩くクアドリーユに不可欠といえるタンブー・ディバスや号令が、バウロンやスクエアダンスのコーラーに通じていることを、アイリッシュやアメリカン・フォークダンスのファンの方も感じ取れるに違いない。
 バンドリーダーとしても活躍する、フェルナンド・マウルのバンブー・フルートの音色が可愛らしい、オリジナルのシュヴァル・ブワは、弥が上にも聴く者に高揚感をもたらすが、ネグルなベレや、ロロ作曲のビギン臭の強いトラック、ヴァルスを挟んだインストゥルメンタルのマズルカ他、曲調はバラエティに富んでいる。
 民俗調になり過ぎず、かといって前衛や芸術性にも固執しないマルセの芸人魂がもたらす清々しさは、相変わらず健在のようだ。(2005.4 SY)