THE RIPPINGTONS

Wild Card

2005 [Peacon LLC/Victor VICJ-61263]
 ラス・フリーマン(g) 率いるリッピントンズ。スムースジャズの表看板のようなバンドをこのサイトで取り上げる理由は、中身を聴けばお分かりの通り、そのラテン指数の高さ故。
 リッピントンズといえば、70年代後半から80年代にかけてフュージョン・シーンをにぎわせていた、スパイロジャイラとかイエロージャケッツたちに比べると、後進に当たるわけだけれど、18年のキャリアの中で15枚のアルバムを送り続けてきた事実は、金太郎飴になりがちなシーンの特性を考えると、大いに評価に値するキャリアといえるだろう。当時ゴマンといたフュージョン系バンドのなかで、昨今のスムースジャズ人気による復活組を除けば、片手の指で足りるほどしか生き抜いたバンドはいないのではないだろうか。
 彼らが長きに渡って支持を受け続けている理由は、単に心地よいということだけではなく、このフィールドが好きなリスナーには堪らないキモを捕らえていることにあるのだろう。それはテクニックでもオリジナリティでもないフュージョン固有の、サルサでいうところのサボールやセンティミエントに値するような、胸を突いてくるエレメントが、実はこのスムースジャズ〜フュージョンにおける、必要不可欠かつ隠れた継続要因だったりするのだ。
 そうした味わいを残しつつ、ゲストの名前を見ただけでもラテン方向への明快な姿勢が際立つ今作品。ストリート色の強いオゾマトリを絡ませた理由がいまひとつ理解できないのだけれど、アルビータやウィリー・チリーノといったマイアミ・サルサ界の人気者の参加は、ノスタルジックな南フロリダの雰囲気とも相まって、リッピントンズのサウンドとは好相性をもたらしているような気がする。
 シャンテ・ムーアが歌う「Till You Come Back To Me」(スティービー・ワンダー作)だけが唯一のカバー曲。ラス・フリーマンにとって“ラテン”という新しい刺激が、一層の創作意欲をかき立てているんじゃないか、と思わせるほど各々の曲に勢いを感じさせる。リリース早々にビルボード誌コンテンポラリー・ジャズ部門で堂々1位に輝いたのも、そんな充実ぶりの表れなのだろう。
 ハードコアなデスカルガも良いけれど、たまにはラテン風味の強いスムースジャズでリフレッシュするのも良いもの。(2005.6 SY)