MARLON SIMON
AND THE NAGUAL SPIRITS


Live in La Paz Bolivia...

2004 [INTRIGUE]
 アクの強いトラップドラマーがひしめくラテンジャズ界にあって、マーロン・サイモンはスティーブ・ベリオスと共に、正統的なイメージを個人的に持っている、理論派ドラマーだ。彼はベネズエラ出身だけれど、ニューヨーク拠点ということもあり耳にする機会も多く、以前にCubopから発売されているスタジオ録音のソロアルバムも、非常に高い評価を受けているので、ラテン音楽ファンにとっては、二人の弟よりも馴染みがあると思う。
 マーロン・サイモン率いるナグァル・スピリッツによる、2003年にボリビアのラパスで行われたライブ・レコーディング。アルバム内5曲だけという長尺のトラックでも、臨場感ある演奏に聴き所は多い。スモールコンボでのライブ演奏ということもあって、ミュージシャンのスキルが反映した音の輪郭が、しっかり捕らえられているのが魅力だ。
 そのナグァル・スピリッツを形成するメンバー。まずピアノには、オープニング・トラックの作曲者であるマーロンの弟、エドワード・サイモン。自ら7枚のリーダー作を既にリリースしていて、テレンス・ブランチャードやボビー・ワトソン等でも知られるジャズシーンのアーティストだけれど、ラテンにおいての彼のピアノは、パーカッシブなものよりも、クラシックのバックグラウンドを感じさせる、柔らかいプレイに印象が残る。
 トランペットのアレックス・ノリスもコンガのロベルト・キンテーロも、ニューヨーク・ラテンを支えるプレーヤーとして、似たような仕事場で顔合わせの多いミュージシャン。サルサファンにとっては、スパニッシュ・ハーレム・オーケストラの来日でロベルトをご存じかも。
 モスクワ生まれのベーシスト、ボリス・コズロフは、マイケル・ブレッカーやルー・タバキンのクラブ公演などで度々来日(12月にはミンガス・ビッグ・バンドでも)のある人。ラテンではボビー・サナブリアの仕事だろうか。カチャオの例があるので、珍しいことではないにせよ、このアルバムでの弓を使ったウッドベースのソロは印象的だ。
 また、リード奏者のピーター・ブライニンは、チコ・オ・ファリルでも腕を振るっていたが、ウィーリー・コロンのバックを努めるリーガル・エイリアンのメンバーとして、トロンボーン隊とのコンビネーションをボブ・フランセシーニと共にとっていたサックスプレーヤーとして認識している。
 こうした腕っ節から繰り出されるインプロビゼーションは、ライヴならではの醍醐味だけれど、トラック#3「Tranquilo Mood」にみられる、サイモン兄弟の末っ子、マイケル・サイモンの作曲能力にも注目したい。
 ラストを締めくくるラテンクラシック「Obsecion」は、起伏のあるドラマティックなアレンジにより、弥が上にも盛り上がりをみせる。音楽教育にも熱心なミュージシャンなだけに、エデュケーショナル・ツールのような印象すら湧いてきた。(2005.11 SY)