V.A.

The Caribbean

2006 [Putumayo World Music 245]
 タイトルはズバリ『ザ・カリビアン』。
 かつてウィリー・コロンが述べていた「米国生まれのヒスパニックにとって、サルサは自らのルーツを知る扉である」というような言葉をふと思い出した。このアルバムに収録された楽曲はすべて、アフリカ色を深くえぐり取ったものでなければ、ヨーロッパのいにしえのサロンで演奏されたような音楽でもない。ミュージシャンの創意工夫や気まぐれも重要なポイントだけれど、カリブ海の島々が歩んだ複雑な歴史の一端を垣間見ることが出来る、いかにもクレオール的な楽曲が並んでいるのだ。
 マルチニークの田舎の音楽をバンジョーで奏でるカリ、メント回帰のベテラン、スタンレー・ベックフォード、DX-7流行以降のソカの雰囲気はアルーバのクラウディウス・フィリップス。国も言葉も異なるアーティストでありながら、共通してブリティッシュ・フォーク“クアドリーユ(カドリール)”のニュアンスを持つ楽曲を冒頭に並べたところは、カリブ海の混血音楽に対する興味を煽る選曲者の意図…と考えるのは行き過ぎだろうか。
 カリブ海の異なる文化の融合が生んだ、音楽の化学反応はもちろん遠い過去のものだけではない。キューバ音楽を生真面目なスカで演奏する #4のスカ・クバーノ。コンパ前夜のハイチ音楽に、ジャマイカ風味を現代的な解釈で味付けた#5のマイケル・ベンジャミン。完成されたカテゴリを多く持つキューバにおいて、混色の多いカリビアンポップスを発信する#7のワルド・メンドーサ等。
 ジャマイカ、マルチニーク、ハイチ、ドミニカ共和国、キューバ、トリニダード…様々な国の様々なポピュラー音楽が詰まった、緩やかなカリビアン・ミュージック入門CDとして十分楽しめることは間違いないが、さらにカリブ海文化探求の足がかりとして役立てるなら、大変意義のあるリリースとなるに違いない。(2006.1 SY)