MARTA GOMEZ

Entre Cada Palabra

2006 [Chesky JD301]
 カリ(コロンビア)生まれのシンガー・ソングライター、マルタ・ゴメスの通算4枚目にあたるアルバム。今回も期待通りの内容。
 6歳で音楽を学び始め、クワイヤで10年間、その後ボゴタのハベリアナ大学から、米国ボストンのバークリー音楽大学を優秀な成績で卒業、という音楽エリートの彼女。2001年にソロアルバムをリリース後、2003年の2作目「SOLO ES VIVIR」の好セールス、3作目「CANTOS DE AGUA DULCE」でビルボード誌のベスト・ラテンジャズ部門にノミネート、と着実なステップを歩んでいる。作品ごとにスケール・アップしている気がするのも、こうした世間の評価が自信につながっているからなのだろう。ボーカル・テクニックに関する書籍の出版もそうしたことの現れかも知れない。この間、在米日本人ギタリスト塚本浩哉率いる、インテロセアニコのプロジェクトへの参加などもご存じの方もいるだろう。
 彼女の音楽は、とてもフォーキーだ。中南米のリズム・ルーツを勉強しているし、'60〜70年代のヌエバ・カンシオンに直結している。かといって伝統音楽継承者のようなスタイルでもなければ、好戦的な要素も見あたらない。ラテンアメリカのフォルクロリックな音楽エッセンスをジャズ・テイストで表現する、いわばヌエバ・カンシオン版の、キューバのフィーリンやブラジルのボサノヴァのようなアプローチと言って良いかも知れない。
 ランドーやヴァルス(ペルー)、チャマメやサンバ(アルゼンチン)、バンブーコやクンビア(コロンビア)、ソン(キューバ)、カンドンベ(ウルグアイ)、ホローポ(ベネズエラ)など、まるで旅行を楽しんでいるかのように、様々な音楽要素が耳に飛び込んでくる。メキシコのトラッドソング「シエリト・リンド」のカバーもある。アレンジを担当しているのは、アルゼンチン出身のフリオ・サンティジャンで、家族のようなバンドづきあいなのか、しっくりとはまったアンサンブル、まさにバンドの音となっていることが素敵だ。
 近年、カンシオン系アコースティック・ラテンジャズの女性歌手が元気だけれど、マルタ・ゴメスの持つ優しい歌声は唯一無二の個性だ。心地よい58分の南米旅行に感謝したい。
 なお、アルバム収益の一部は、コロンビアの子供たちのために彼女が設立した「アグア・ドゥルセ基金」に積み立てられる。(2006.5 SY)