MICHAEL BENJAMIN

Mika

2006 [Beans/Lusafrica] 2004 [MYC]
 ハイチのポピュラーミュージック・シーンに大きな波を作り出したムーヴメントとして記憶に新しいトゥバドゥ。流行の発端となったのは、オールスター・キャスト“アイチ・トゥバドゥ”だが、彼らの仏/日盤ファーストリリースの中で、新人ながら非常に強い光彩を放っていたのが、モントリオールを活動拠点にしていたミカエル(マイケル)・ベンジャミン。ハイチの有名な歌手を父に持ち、恵まれた音楽環境に生まれ育ったこともあり、現在20代半ばにあって大きな才能を開花させている、シンガー・ソングライターである。
 既に彼は『Vwayaji』『Mika』の2作品をインディペンデントでリリースしているが、その『Mika』がこの度メジャー・リリースとなり、日本でもめでたく流通されることとなった。
 ハイチのミクスチャー系のアコースティックなものとしては、自らの音楽を“クブアブラ(Cuba+Haiti+Brazil)と名付けるベートヴァ・オバが先達として活躍するが、ミカ・ベンジャミンの場合は世代が異なることもあり、音の素材は大きく異なっている。前作以上にポップで色彩豊かなアルバムに仕上がったこの『Mika』では、コンパやレゲエは当然のこと、トゥバドゥ・テイストのオープニングに始まり、ヒップホップ/R&B、ズークやオールドスクール・コンパ、ソフトロック調のものやカーニバル(ララ)仕様など、様々な音楽要素が曲ごとに洗練度高く編み込まれている。フランス語、クレオール語、英語、ジャマイカン・パトワなどを自在に使い分ける歌唱も、彼のオルタナティブなサウンドを強調させている。
 ハイチ音楽のファンにしてみれば、ミジック・ラシーン/クレオールジャズ系のセルゴ・デシアス(perc) から、Tヴァイスやカリミなどの人気コンパ・バンドとの共演が興味を惹くところかも知れないが、多くの曲アレンジを担当したアンディ・バロウという人物の仕事も讃えられるべきところだろう。
 ミカ・ベンジャミンは、ハイチ人コミュニティの中のコンパ熱と、外の世界におけるハイチ音楽の評価とのギャップに、恐らく不満を持っているアーティストだと思う。この先ハイチ音楽とメインストリームの音楽との均衡をどのように保ちながら、フージーズのような成功を勝ち取っていくのだろうか。ハイチ期待の若手の活躍を見届けたい。(2006.7 SY)