VALERIE LOURI

Bay Lanmen

2006 [Hibiscus]
 バイオリンがフィーチャーされた、マルチニークの伝統色の濃いアコースティックなサウンド。といってもマラヴォワやマホガニーなどのような、ジャズビギンとは少し毛色の異なるユニークなアプローチ。正直、目からウロコが落ちました。
 この作品がソロデビューとなるヴァレリー・ルーリは、マニッシュなルックスとは正反対に、エディット・ルフェールを思い出させる、とても女性らしい歌声と、新人とは思えない優れた表現力を持つシンガーだ。もともと彼女は、ダンサーとしてキャリアをスタートさせていて、ブロードウェイでモダンダンスの修行を積んだ後、帰島後にベレなどのアンティーユ民俗舞踊を学んでいる。本国のユーロ・ディズニーランドで『ライオンキング』のショーにも出演していたということだ。歌手としては、この作品以前に、グアドループのグループ“ベリア”のレコーディングでも声を披露している。
 このアルバムの大半の曲を手がけているのは、ベース・プレーヤーのマーク・エルミラ。哀感のあるメロディやアコースティック・ギター&バイオリンなどのニュアンスは、マルチニークというよりも、近い文化圏にあるアフロ・ポルトガル(カボ・ヴェルデなど)のものだろう。しかしながら、バンブーフルートの節回しやタンブーのシンコペーションなどは、ユジェーヌ・モナやデデ・サン・プリなどで耳に張り付いている、まさしくマルチニーク伝統芸能そのものなのである。意外とありそうでなかったミラクルなアレンジ。
 映画『Biguine』に主演したリード奏者、マックス・テレフ(ブワ・コレ、タクシー・クレオール)もフルートの他デュエットで歌手参加。
 マヌエル・セゼールやジル・ロジーヌといった、マラヴォワの息子たちの各々の活動を筆頭に、マルチニークのトラディショナル系新世代の評価が高まるなか、このフィールドのファンにとっては、何とも心強いディーバが誕生した。
 しかし、このテのはこっちに入ってこないねえ。何やってんだろ。(2006.8 SY)