JOEL "PIBO" MARQUEZ

The Best Of Hot Hands

2007 [Macudo Music]
 ピボ・マルケスは、オルランド・ポレオやヘラルド・ロサレスらと同様、ヨーロッパのラテン音楽シーンで知られる、ベネズエラ人コンガ奏者。ラテンジャズにおいては、米国方面のマーケットでもお目見えが多く、キューバのトニー・マルティネス、ジャズファンにはお馴染みのチコ・フリーマンなどへのサポートがある。最近もデスカルガ・クリオージャの名義でサルサ〜デスカルガ・アルバムをリリースし、高い評価を受けているが、こうしたキャリアは彼の一側面に過ぎず、ブラックホールと言っては大げさかも知れないが、実は底知れないフトコロを持ったパーカッショニストなのだ。
 彼は子供の頃にクアトロを手にしたことによって、ベネズエラの伝承リズムに興味を持ったらしいが、彼の勤勉意欲はベネズエラの枠をはみ出し、キューバ、プエルトリコ、コロンビア、ペルー、スリナム他、ラテンアメリカ一帯のアフロリズムにレパートリーは拡大する。彼の凄いところは、ステレオタイプの表面的なリズムをすくっているのではなく、そのフィールドに身を投じてリズムを習得して、自分のものにしている点だ。名門グルーポ・マデラを離れた後、実際1990年代には6年ほどコロンビアで生活していたらしく、パレンケのチャンペタ・レコーディングなどにも彼のクレジットがある。アルフレッド・デ・ラ・フェやグアヤカン他、多くのサルサやポップスのアルバムにへの参加も、たぶんこの頃だろう。ボンバ&プレーナも、太鼓に熱心なプエルトリコのパオリ・メヒアスとのコネクションもあり、たまに聞こえる怪しいボンバとは質が異なる。さらには、フランスでの仕事も多いため、このアルバムに収録されているような、フレンチカリブ系のリズムもお手の物だろう。思い出したが、マラヴォワのバイオリン・プレーヤーと共に、チャランガ・アンサンブルをやっていた記憶がある。
 本作品は、ローカルリリースされた "Caminos" や "Con Las Manos Calientes" などのアルバムからピックアップされたベスト盤。マリのママ・シソコもやっていた "IRI" や、たぶん共演経験もあったのだろう、先頃亡くなったジョー・ザヴィヌルに捧げる曲など、どれも複合的にリズムを組み合わせているが、サンゲオやガイタ、ボンバ&プレーナ、ソンやルンバ、ブガルー、レゲエ、ヒップホップ… 次々に飛び出してくる音は楽しいが、目も回りそうだ。
 ジャケットで損をしているが、ラテン・パーカッション好きには、たまらないアルバム。(2007.11 SY)