MARVIN DIZ

Habla el Tambor

2008 [Oshosi Swing]
 ニューヨークのラテンジャズ界におけるキューバ民俗伝承というと、映画『カジェ54』にも紹介があった、オルランド・プンティージャ・リオスを思い浮かべる人は多いだろう。2月にリリースした伝説のルンバ作家に捧げる素晴らしいアルバムを置き土産に、彼は8月に他界(享年60)してしまった。
 また、このフィールドには、イエルバ・ブエナのフロントマンとしても知られる、ペドリート・マルティネスの存在がある。個人的に彼の「名前買い」をすることもあって、マルビン・ディズという名前を知ったのは、このペドリート周辺(ブライアン・リンチとか)のアルバムからだったと思う。
 そのマルビン・ディズ名義では初ソロとなるアルバムが、プンティージャの死を悲しむアフロキューバン・ジャズのファンの心を、元気づけてくれそうだ。
 大きな助力となる前述のペドリートやマウリシオ・エレーラ、ヨスバニー・テリーのような、キューバ人ミュージシャンの参加は予測がつくかも知れないが、ニューヨークラテンを代表する名だたる凄腕ズラリ!には、まずビックリせざるを得ない。例えば、トラック#12 "Homanage A Congueros y Timbaleros" では、マウリシオ・エレーラ→ペドリート・マルティネス→ルイシート・キンテーロ→ロベルト・キンテーロ→ジョンデル・ペーニャ(元クリマックス)→パオリ・メヒアス→ラルフ・イリサリー→エリエル・ラソ(元ディアカラ/ハバナ・アンサンブル)→ボビー・アジェンデ→マルビン・ディズらの面々が順番にソロを叩いていく、といった具合だ。他のトラックには、ジョバンニ・イダルゴやリッチー・フローレスなど、高速回転の名手もいる。フォルクロリックなルンバやヨルバソングだけでなく、フル・オルケスタのダンスチューンも間違いなく高品位だ。
 マルビン・ディズは、キューバン・パーカッションの歴史や教則に関する、2冊の書籍も執筆したという。ルンバ一家に生まれ、幼い頃からキューバの民俗芸能に浸ってきたマルビン・ディズの確かな経験は、ニューヨークラテンの次世代に、キューバの伝統をつなげていく力強い見方になっていくのだろう。全ラテンパーカッション・ファンのマスト。
 それにしても、アクセル・トスカの参加するタイトルトラックのルンバは美しい。(2008.09 SY)