LUIS ENRIQUE

Luces Del Alma

1990 [Sony/ESCA5435]
 80年代以前のサルサのレコードは、サウンドの質において、メインストリームのものより、遥かに下回るものが多く、レコーディングに手間ひまかけていると思われるのは、ウィリー・コローンのものぐらいしかお目にかからなかった。これには、作り手の多くが、レコードの価値を作品としてよりも、ショウのためのプロモーション・ツールとして重点を置いていた、という理由がひとつある。特にプレーヤーの即興性が大事とされるのがサルサの大きな魅力であり、CDばかりが素晴しくライブがイマイチというものよりは遥かに健全であることは間違いないのだが、音が悪いのと良いのとでは当然良いほうがイイに決まっている。
 男前のあんちゃんであったために、それまでアイドル視されていたルイス・エンリケが、90年代突入と同時に、本来の実力を我々に見せてくれたのが、このアルバム「LUCES DEL ALMA」。彼にとっての通算4枚目であるこのアルバムの驚くべきことのひとつは、その音づくりの良さだ。きっちりしたレコーディングが行われているのである。いまでこそサルサのアルバムのクオリティがメインストリームのポピュラーミュージックに劣っているとは誰も思わないだろうが、前述の通り当時としてはまだ珍しいものだった。
 ご存じの通りルイス・エンリケは、シンガー・ソング・ライターというだけでなく、コンガをメインに数々の楽器をこなすマルチ・プレーヤーだが、このことからも音づくりに対する妥協を許さない頑固さがうかがえる。
 ラテン・ミュージック・ファンのみならず、普段ポップスやロックを聴いている人たちにもすんなり入っていけるアルバムで、最近の大手レコード会社から発売されているポップス臭いサルサに、少なからず影響を与えたに違いない1枚だ。(1997.06 SY)