RAFAEL CEPEDA

El Roble Mayor

1996 [Bombalele HC010CD]
 ここのところ、このコーナーも比較的新しい録音のものが続いているが、今回も96年のものである。
「サルサ」というと、そこに含まれるキューバ的な部分にスポットが当てられがちで、コルティーホの出現以降、多くのアーティストたちがプエルト・リコ伝来のリズムを刻んでいるにも関わらず、それに関して語られる機会は決して多くはない。また、プエルト・リコの音楽においても、ヒバロやプレーナの録音は多いのだが、何故か伝統的なボンバの録音は非常に少ない。
 そんな中、昔ながらのアフロ・プエルトリカンの音を我々の耳に届けてくれるのが、このラファエル・セペダの一家だ。今年リリースされ話題になった、ジョランディータ・モンヘの "mi encuentro" でも大きな役割を担っている。
 彼らの叩きだす太鼓のリズム、あるいはそれらを説明するラファエル・セペダのくだりなどを聞いていると面白いことに気がつく。彼らのボンバに含まれるリズムの多くは、マルティニーク、ハイチなどのフレンチ・カリブに残る太鼓やリズムの名前と共通している。ボンバ・ドラムの側面を叩く音。これは「クァ」と呼ぶらしいのだが、これもまさしく小アンティルのベレ(ベル・エア)における「チ・ブワ」と同じ役割を持っている。トリニダードで馴染みあるスティックファイティングもボンバの演奏とともに行われる場合があるらしい。ボンバの成り立ちにおいて、小アンティルからの移民やハイチ文化がどういう役割をしたのか定かではないが、カリビアン・ミュージックをグローバルにとらえたとき、プエルトリコの伝統音楽はいま最も注目に値する音楽ではなかろうか。そしてこのアルバムは現時点で私が知る限り、伝統ボンバを聞かせるセペダ・ファミリーの数あるレコーディングのベストである。
 ラファエル・セペダは96年に86歳で亡くなってしまったが、その遺志はしっかり息子たちに受け継がれる。(1997.09 SY)