LUISITO AYALA

 エル・ガージョことティト・ロハスを輩出したことでもよく知られる、プエルトリコのトップ・オルケスタ、プエルトリカン・パワーの日本公演。90年代のMPレーベルあたりのファンとしては、味わい豊かな無二の声を持つオズバルド・ロマンと、愛嬌のあるルイシート・アヤラJr.&ホセーロ・ヘレーナという3人のフロントが全く変わってしまったため、僅かながらの不安を胸に持ちつつライヴへ足を運んだが、テイストは変わったとはいえ、相変わらずのキャッチーなパフォーマンスで沸かせてくれ一安心。
 リーダーであるトランペットのルイシート・アヤラ(右写真中央)にインタビューを行ったのはツアー最終日の東京公演前の午後。バンドのまとめ役ということもあり、気遣いのある振る舞いが印象的な彼に、新しいフロントの人材について伺った。
 「オマール(・ロドリゲス)の場合は、元々若い歌手を入れたいという目的があってね。サルサ・キッズにいるときから知っていたし。カルロス(・ベガ)は、既にソロアルバムも出して歌手としての活動を知っていたんだけれど、彼の魅力が活かされる場に恵まれていないと思っていたんだよ。ホスエ(・ロサード)は、ボビー・バレンティンのライヴアルバム("35 ANIVERSARIO - VUERVE A LA CARCEL" 2002)なんかでも分かるように、既に実力ある歌手として知っていたんだ。」
 オーディションというものではなく、すべてルイシートの耳経験からのアプローチということである。
 笑いと哀愁が同居するプエルトリカン・パワー。CD、ライヴ共にユニークなアイデアが盛り込まれるのは彼らの大きな魅力でだけれど、ルイシートはエンターテインメントというものをどういう捉え方をし、重点を置いているのだろうか。
 「(CDに関しては)ご存知のように映画のパロディをタイトルやジャケットに持ってきたわけだけれど、前からこういうことをやってみたくてね。今のJ&Nに移ってから実現できた。人目を引くことをやってライヴにつなげたかったんだ。ライヴでは観衆に喜んでもらうこと、満足させることを大事に思っているよ。まずは出来る限り色々なことをやって、次につなげることを考えるんだ。」
 満足させて次につなげる…。オルケスタを引率する者の芸人魂が凝縮されたお言葉。
 プエルトリカン・パワーは本国プエルトリコはもとより、コロンビアでも絶大な支持を得ているグループ。かねてより熱狂的なファンによって危険な目に遭った経験をミュージシャンたちからしばしば聞くが、彼らの場合はどうなんだろう。
 「野外コンサートでは、暴動が起きたためセキュリティによる発砲騒ぎがあったね。あとバスでの移動中にゲリラによる強盗にもあったよ。そのときは、我々がプエルトリカン・パワーであることを伝えて、サインで難を逃れたんだ(笑)。」
 うーむ、やっぱりそうかあ…。
 プエルトリコに多くのタレント性のあるトランペッターが存在するように、ラテンのアンサンブルのなかで、ボリクア風味を漂わせる要素として、トランペットがときに大きな役割を担う。ルイシート・アヤラは好きなトランペッターとして、ロベルト・ロドリゲス(レイ・バレット楽団他)、ビクトル・パス(アレグレ・オールスターズ他)、レイ・マルドナド(リッチー・レイ&ボビー・クルース他)などを挙げている。嗜好と世代観がはっきり伝わるが、そんな彼はサルサ以外にどんな音楽に興味を持っているのだろうか。
 「ジャズ、ロック・エン・エスパニョール、ポップス…色々好きだよ。」
 今後もプエルトリカン・パワーの特徴を残しながら、ラップ、バラーダ、様々なものを取り入れていくというルイシート。サウンドの展開ももちろん楽しみだけれど、オズバルド・ロマンがプエルトリカン・パワーの大きなポジションを示してきたように、ルイシート・アヤラの手の上で、ソネオに優れた実力派ホスエ・ロサードが、どのような個性で今後のプエルトリカン・パワーに風味をもたらしてくれるのかが、注目すべき重要なポイントだろう。
 このサイトのギャラリー・コーナーにあるプエルトリカン・パワーのイラストを、ルイシートはレターヘッドなどにも使用している。メンバーが変わったので描きなおさななければならない、という使命を預かりつつインタビューは終了。

2003.2.10 at Shinagawa Prince Hotel
Interview & text: Seiji Yamaguchi
Thanks: Toru Ikedo (vengamigente.com)