MICHEL CAMILO

 パーカッシヴかつスリルに満ちた演奏によって、日本でも人気の高いドミニカ共和国出身の技巧派ピアニスト、ミシェル・カミロ。最近ではラテンジャズ・ファンを歓喜させた映画『Calle 54』などでも、彼の生命力豊かなピアノプレイを楽しむことができるが、この映画の監督フェルナンド・トルエバは、以前にラブ・コメディ『Two Much(邦題:あなたに逢いたくて)』のエンディングでも、ミシェル・カミロのライブ・パフォーマンスをシーンに使用している。カチャオやパキート・デ・リベーラらを巻き込んでの『Caribe』の演奏だ。
「監督のフェルナンド・トルエバ氏はラテンジャズの大ファンで、かなりのレコード・コレクターでもあります。映画『Two Much』は彼にとって、演奏シーンを映画に取り入れる初めての試みでもあったのです。ライブの臨場感を出すためにワンテイクで撮りました。『Calle 54』のほうは、トリオでのパフォーマンスですが、こちらも同様にワンテイクです。」
 そんなライブでの空気感を大事にする彼にとって「インプロビゼーションとは何か」という漠然とした質問をぶつけてみた。
「バックグラウンド、ソース、フィーリング、アイデンティティ... そういった人生にあるものを注ぎ込む瞬間です。音符の羅列ではなく、その瞬間を通し観客とのコミュニケーションを計ることによって、ミシェル・カミロはどういった人間であるのか、何を思っているのかを知ってもらう、それがインプロビゼーションです。」
 彼の穏やかな口調からは想像しにくいが、ミュージシャンにはキツい注文を要求するとよく言われているミシェル・カミロ。今回引き連れてきた2人のミュージシャンのストイックなプレイを見ればナルホドとも思えるが、彼らについては。
「アンソニー・ジャクソンは天才。無二の個性を持つ、非常に完成された偉大なベース・プレーヤーです。彼とは何度も演奏しているけれど、毎回それが最後の演奏のように気合いが入るんですよ。音楽に対する誠実さや、音楽こそが人生である、といった価値観が自分と共通していてね。」
「クリフ・アーモンドは10年前、当時のドラマーのデイヴ・ウェックルがグループを離れるときに紹介してくれたドラマーです。ニューヨークでオーディションを受けてもらったんですけど、どの曲をやる?という僕の質問に対し、逆に同じ質問をしてきてね。彼は僕のすべての曲を頭にたたき込んで来たんですよ。その真剣さが良かった。」
 マリダリア・エルナンデス、ジョバンニ・イダルゴ、トマティート、チューチョ・バルデスなど、様々なコラボレーションでも我々を楽しませてくれているが、この先一緒にプレイしてみたいアーティストに小曽根真の名前を挙げていた。以前何かの記事に「その時代のサウンドを創れないのは、ジャズマンとして怠慢」というようなことをミシェル・カミロは語っていた記憶があるが、彼の澱みのない音楽とそれに対する姿勢は、こうしたちょっと畑の違うミュージシャンとのコラボレーションからも、生まれてくるのだろう。ますますこれからも、ジャズに新しい息吹とドラマをもたらしてくれるに違いない。

2001.9.26 at Blue Note Tokyo
Interview & text: Seiji Yamaguchi
Thanks: Blue Note Tokyo, Universal Music, Sayako Higashitsuji, vengamigente.com