ROBERTO FONSECA

 近頃、キューバ出身の20代の若いジャズ系のアーティストがホットである。また近頃、ジャズとクラブミュージックとの融合もあっちこっちで盛んである。そんな「近頃」がダブルな奴が、ピアニストのロベルト・フォンセカ。ビクター発売による本邦初お目見えのアルバム、彼のソロアルバムとしては2枚目にあたる『No Limit: Afro Cuban Jazz』のプロモとクラブ・ギグで初来日した彼に話を伺った。「近頃」の奴だけあって、至ってクールで口数は少ない。
 まず、最近のキューバの若手から発信されるジャズについて。これは世代独特の嗜好なのだろうか。
 「そうだね。若者の間では、ジャズに興味を持っているという傾向は、確かにあるかも知れないね。」
 「僕が影響を受けたのは、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィス、セロニアス・モンク、ハービー・ハンコック... 色々。」
 彼は、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのツアーメンバーとしても働いていたが、大ベテランが集う彼らの中では、世代のギャップを感じるという。そして挙がってきた先鋭的なジャズの巨人たちの名前。やはり新しい世代というものを感じる。
 ロベルトの音楽を何の先入観も持たずに聞くと、それがキューバ人によるものであることはなかなか理解できないに違いない。その冷めた質感を持つサウンドの最たる特徴は、ドラムンベースのようなクラブ・ミュージックを持ち込んでいる点にあるのだが、それについてはどういった経緯があるのだろう。
 「まず兄弟がそういったものを聞いていたんだ。どういった音楽なのかっていうのも教えてくれてね。それで興味を持ち始めて、演ってみる気になったんだ。」
 前述の『No Limit: Afro Cuban Jazz』に収録されている、ボレロ・ナンバー『De Que Vale』のアレンジは衝撃的だ。果たしてどういうときに、その奇抜なアイデアは生まれてくるのだろうか。
 「アイデアはピアノの前ではなく、普段歩いているときなんかに生まれてくるものなんだ。『De Que Vale』は、ボレロのような静かな曲にドラムンベースをくっつけようとは誰も思わないだろうけど、以前からやってみたいアイデアだった。」
 クラブミュージックやキューバン以外に興味を持っている音楽に関して「フォルクローレ」と彼は答えた。フォルクローレは当然、アンデスではなくキューバのより田舎のルーツっぽい音楽を指しているわけだが、将来ロベルトの世界にどういった形でフォルクローレが持ち込まれるのか期待はふくらむ。アフロ・キューバン・ジャズの伝統の呪縛に締め付けられたアーティストは世界に多いが、次なる破壊屋の筆頭としてロベルト・フォンセカの名前をここに挙げておく。

2001.8.28 at Victor Entertainment, Inc.
Interview & text: Seiji Yamaguchi
Thanks: Victor Entertainment, Ahora Corporation, Yukiko Yoshino