TELMARY DIAZ


 キューバの女性ラッパーとして知られているテルマリーは、先頃発売された初のソロアルバムを聴けば理解できるように、ラップや歌うことだけでなく、言葉とメロディを用いながらも、より自由な表現で独自のスタイルを築いているアーティストだ。北米ヒップホップ・シーンからの刷り込みのようなラップ・スタイルが多い中、どういう経緯で現在のような表現方法を創るに至ったのだろう。
「私は“ラッパー”ではなく“コミュニケーター”として自身を認識しています。人とのコミュニケーションが好きだったため、もともとジャーナリストを志望していました。でも、自分の本が出来るのを待つよりも、マイクを持った方が早いと思ったので、音楽の道に進みました。周囲に音楽家の友人が多かったのも理由のひとつです。私は本当に音楽が大好きで、今のようなスタイルにはそれまで聴いてきた音楽、読んできた本が影響しているのです」
 テルマリーのファーストアルバムのプロデュースは、ロベルト・カルカセスとジューサが行っている。シーンの中でも、特にユニークかつ先端的な音楽活動を行っている彼らとは、どのように知り合ったのだろう。
「ロベルトとは、私が在籍していたフリー・ホール・ネグロのディレクターを通して知り合いました。以来彼らのライヴに足を運ぶようになり、ロベルトが私をステージに上げる、といったことが続くようになりました。そして、ロベルトが率いるインテラクティボのメンバーとして加入するに至ったのです」
 アルバムを通して、特に伝えたいメッセージやコンセプトなどはあったのだろうか。
「まず、ひとつはキューバ音楽が前面に出ていること。キューバらしい音楽ということではなく、こうした発展形もある、ということを伝えたかった。それと、タイトル『ア・ディアリオ』(=毎日、日常)の通り、自分の日常、キューバの日常を表現したかった。そしてもうひとつ、友情についても。友人たちがいなかったら今の自分は存在しないから…」。
A Diario
TERMARY
(CARAMBA 186)
 アルバムの中の英語による歌詞についても「自分は英文学を専攻していたし、英語でものを考えることも多い」という理由などから、彼女にとってはそれも“日常”ということらしい。コミュニケーションの範囲が拡がる、という理由も当然ながら付け加えている。
 インタビュアーとして愚問とは知りつつ、多種多様な要素が混ざり合った音楽を表現する彼女の嗜好を解くべく「影響を受けたアーティストは?」と尋ねたところ、ローリン・ヒル、コモン、ミッシー・エリオットなどを皮切りに、おもちゃ箱をひっくり返したように多くの名前を彼女は挙げた。R&B、ヒップホップだけではなく、ジャンルも多岐にわたる。そしてまた、将来的な音楽の構想もたくさん持ち合わせているようだ。本当に音楽が大好きなのだ。
 映画『ミュージック・クバーナ』でも大きくクローズアップされているので、「テルマリーって誰?」という音楽ファンは是非、映画を通してキューバ音楽の新たな才能にタッチしてほしい。

2006.7.5 at Phantom Film
Interview & text: Seiji Yamaguchi
Thanks: Ahora Corporation